【初心者向け】基礎&実践プログラミング

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【脳MRI画像解析入門】脳画像解析の概要

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動かしながら学ぶ PyTorchプログラミング入門

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  • 作者:斎藤勇哉
  • 発売日: 2020/11/30
  • メディア: Kindle版

脳画像解析とは

 ブラックボックスといわれてきた脳の研究が、21世紀には飛躍的に進展し、20世紀後半から「21世紀は脳科学の時代」といわれている。脳科学が急速に発展した背景には、頭を切り開いて脳に直接電極を指すような計測手法から、非侵襲的に脳の構造・機能を計測する手法の発展がある。非侵襲的に脳を計測する装置は様々であるが、近年では磁気共鳴画像法(Magnetic Resonance Imaging: MRI)が注目されている。MRIは、磁場とラジオ波(RF)を用いて生体内に多数存在する水素原子核(プロトン)の状態を可視化する技術で、研究の分野のみならず臨床診断にも用いられている。MRIでは、生体内の様々な情報を取得することができ、脳の構造のみならず機能までも計測することが可能である。このMRI技術を用いて、発達・疾患の評価・機序解明、さらには行動・認知・言語・感情などの心の解明までも期待されており、基礎・臨床医学は言うまでもなく、神経科学(ニューロサイエンス)・心理学・工学・社会学・言語学・神経経済学(ニューロマーケティング)といった幅広い領域で、すでに実践されている。

 脳画像解析によって、具体的には次のようなことが分かる。

  • ある○○(例:疾患、子供/大人、スポーツ選手など)では、脳のどの領域で容積あるいは脳血流がが低下/増加するのか
  • あるスコア(例:年齢、性別、遺伝子、重症度、神経心理など)と相関する脳領域
  • ある課題(例:運動、行動、認知、言語、感情など)で、活動する脳領域

 脳画像解析から得られるこれらの知見と、基礎研究の知見を統合することで、脳という広大な宇宙と無限の可能性を探る。

脳画像解析の種類と特徴

 脳画像解析の分野は、「構造」および「機能」の大きく2つに分けられる。

 脳構造の解析で対象となるのは、主に大脳皮質・白質の容積である。大脳皮質では、厚さや脳回の曲率といった形状情報も対象となる。近年では、生体内の水分子の動きを可視化する拡散MRI(diffusion MRI: dMRI)を用いて、大脳皮質・白質の微細構造を評価する試みもなされている。拡散MRIでは、トラクトグラフィー(Tractography)という技術を使って大脳白質路を疑似的にシミュレーションすることができ、ある脳領域とある脳領域のつながりを評価することで、脳の構造的結合を評価することができる。これにより、脳のネットワークを評価することが可能であり、近年ではグラフ理論と合わせて解析されることが多い。一方で、大脳皮質・白質におけるT1値、T2値、磁化率等の定量値も合わせて解析することもある。

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図 頭部T1WI/T2WI

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図 拡散MRI解析

 脳機能の解析は、脳機能局在を研究する目的に用いられ、Blood oxgenation level dependent(BOLD)効果を用いて、脳賦活を可視化する機能的MRI(functional MRI: fMRI)を解析対象とする。ある刺激(タスク)に対する脳賦活の研究が主流であったが、近年では、刺激を全く与えず何もしていない、安静時(レスト)の脳賦活にもスポットを当て研究がされている。安静時であっても脳は活動しているためBOLD効果で得られるMRI信号値は変動するが、その信号値の時間的変化が各脳領域間で同じであるか?協調していないか?を相関係数を用いて評価し、脳の機能的結合を解析する。トラクトグラフィーを用いた脳の構造的結合では、脳のネットワークを構造的な面から評価するが、機能的結合では、機能的な脳のネットワークを評価することが可能である。

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図 BOLD法の原理模式図

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図 機能的結合の計算過程

画像ファイル形式

DICOM(拡張子: .dcm)

 DICOM(digital imaging and communications in medicine)は、医用画像の共通フォーマットである。MRI・CT・PET・SPECTなど、様々な撮像機器が存在するが、これらの機器で取得された画像をDICOM形式に統一することで、ユーザは撮像機器や機種を気にせず画像を見ることができる。つまり、撮像機器や機種によってフォーマットがバラバラであれば、その分だけそのフォーマットに対応した画像表示ソフトが必要となるということである。

 DICOM形式では、基本的に画像1スライスが1つのファイルになっている。例えば、100枚のスライスがある画像であれば、100個のファイルから構成されることになる。

ANALYZE(拡張子: .hdr/.img)

 ANALYZE形式は、米国のMayo Clinicで開発された形式であり、画像ヘッダー情報を格納する「.hdr」ファイルと画像情報を格納する「.img」ファイルの2つで構成される。以前は、この形式が主流であったが、近年ではNIfTIが主流である。

NIfTI(拡張子: .nii)

 NIfTI(neuroimaging informatics technology initiative)は、米国国立衛生研究所(national institutes of health: NIH)を中心として開発されている形式であり、脳画像解析で主流の画像ファイル形式である。NIfTI形式は、ANALYZE形式よりも多くのヘッダー情報を格納することができ、ANALYZE形式にはなかった画像の左右の情報も持っている。

画像解析一連の流れ

 画像解析の大まかな流れは、次の通り。

  1. DICOMを脳画像解析用のファイル形式に変換(例: DICOM→NIfTI)
  2. 画像に問題がないかチェック
  3. 前処理
  4. 統計解析

1. DICOMを脳画像解析用のファイル形式に変換(例: DICOM→NIfTI)

 CTやMRI等の撮像機器から取得した画像(DICOM)を、脳画像解析用のファイル形式(NIfTI)に変換する。

2. 画像に問題がないかチェック

 解析を始める前に、取得した画像に問題がないかを確認する。具体的には、対象となる領域が撮像されているか、アーチファクトがないかを確認する。これらのエラーが含まれる場合、解析中にエラーが生じてうまく解析できなかったり、解析できたとしても通常ではありえない結果を生み出すことになる。

3. 前処理

 脳画像を用いて統計学有意性を評価するうえで, 各MRIスキャン間における頭部の移動, 脳形状の個人差, 測定方法や物理的原因によるMRI信号の変化等の問題がある。そのため, 前処理を経た後に統計学的処理がなされる。

 例えば、SPMを用いたfMRI画像の前処理の流れは、次の通り。

  1. 各スキャン間の頭部の移動補正(realignment)
  2. 機能的画像(fMRI画像)と構造的画像(3D-T1WI)の位置合わせ(coregistration)
  3. 機能的画像の標準化(normalization)
  4. 平滑化(smoothing)

 まず、①fMRI画像のスキャン間の頭の動きを補正するために、全てのvolumeを最初のスキャンで得られたvolumeに位置合わせをするよう再配置 (realignment) し、全てのvolumeを平均することで得られる平均画像を作成する。

 ②先ほど作成した平均画像を3D-T1WIに位置合わせをし、そこで得られた変換パラメータをrealignmentされたfMRI画像に適応することでrealignmentされたfMRI画像を3D-T1WI spaceへと位置合わせ (coregistration) をする。

 次に、③3D-T1WIをMNI spaceにある脳, 骨, 脳脊髄液, 空気, 骨皮質, それ以外の6 volumeからなるTissue Probability Map(TPM)画像に位置合わせをし、そこで得られた変換パラメータをcoregistrationされたfMRI画像に適応することで標準化 (normalization) する。

④標準化されたfMRI画像を半値幅8 mmのgaussian filterで平滑化 (smoothing) する。

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図 SPMを用いたfMRIの前処理の流れ

4. 統計解析

 前処理が完了したら、統計解析を実施する。全脳を対象とした探索的解析だけでなく、ある関心領域(脳領域)に注目して、値を取得し、統計解析することもできる。


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